緑の水辺
薬用植物紹介


センブリ
Swertia japonica Makino

リンドウ科(Gentianaceae)。日本、朝鮮半島、中国に分布し、日本各地の日当たりのよい山野に自生する2年草で、ゲンノショウコ、ドクダミと並び日本の民間薬を代表する薬用植物。種子から生え、ロゼット(根葉)のまま年を越し、翌年四角形の茎が1〜数本直立し、暗紫色を帯び、上方で分枝する。高さは20cm前後となる。葉は対生し、線形で緑紫色を帯びる。10〜11月頃、先端及び葉腋に星型の5弁花を付ける。白い花弁に紫色の条線が数本通っているのが特徴。種子は黒くて小粒。根は黄色で細い。全草に強い苦味があり、「当薬(トウヤク)」と称して苦味健胃薬とされる。また、センブリ(千振)の名は千回振りだしても、なお苦いことによる。当薬は漢方では使われず、主に民間的な利用や家庭配置薬の原料に用いられる。

採取時期:10月〜11月

調製法:開花期の全草をとり、日陰で乾燥し、緑色を失わないように仕上げる。

成分:苦味成分としてスウェルチアマリン(2〜10%)、ゲンチオピクロシド、スウェロシド、アマロゲンチン、アマロスウェリン等を含む。

用法・用量:
苦味健胃薬及び整腸薬として、胃弱、食欲不振、胃部・腹部膨満感、消化不良、食べ過ぎ、飲み過ぎ、胃のむかつきに1回量として当薬0.03〜0.05gをオブラートなどに包まず、そのまま服用する。(苦味成分が舌の感覚神経を刺激し、反射的に唾液・胃酸の分泌や働きを活発にする。)
1日量1.5gを水300mLで煎じ、1日3回に分け、食前または食間に服用しても良い。また、若はげ、円形脱毛症には当薬15gをホワイトリカー200mLに漬け、密栓して冷暗所に1〜3ヶ月保管後、1日1回、塗布摩擦を続けると発毛促進効果があるとされる。

その他:類似植物には大型のイヌセンブリ(S. diluta Benth. et Hook f. var. tosaen sis Hara)や紫青色の花を付けるムラサキセンブリ(S. pseudoc hinensis Hara)があるが、いずれも苦味が弱く、品質が劣るため薬用には不適である。また、センブリの生薬名は一般的には当薬であるが、日本薬局方では「センブリ」の名で収載されている。

(写真、文ともに奈良県薬事指導所提供)




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