ベル神父のフランス住居誌
発行所  株式会社 近代文芸社
装丁   五味恵子
ISBN4-7733-3629-3 C0095
本体価格 1748円(消費税を含まない価格)
初版発行 1994年12月5日



ホームページ作成日付1998年8月11日


前書き

″ものの時代”といわれる今日、最も欲求され、しかも最も値段の高いのはおそ らく"我が家″でしょう。

 ヤングファミリーはマイホームの夢を見て、場所とか間取りとかを、いろいろ考 えているが、実際購入するまでには何年かかるでしょうか。

 蛤にちゃんと殻があるように、人に、家庭に住まいがある。たとえ借家でも。

 人は住まいに影響され、またその壁に、その部鼻に自分の匂いを移すというか、 自分の何かを及ぽす。年月が経つと、住まいと住む人の間にみょうな行き来が行わ れていく。それが一番はっきり解るのは本人ではなく訪れる人でしょう。″ああ ・・・彼らしい家だなぁ" と。

 住居は住んでいる人間を語る。またその人間の意識に大きな場を占める。それは 文化だ。

 畳生活を三十余年味わった僕は、たまに石造りの住まいを思い出す。

 懐かしい。じゆうたん、窓、階段、地下室、屋根裏部屋、暖炉・・・それら一つ一 つを取っていっても話題は尽きないというか、日本の洋風の家を訪れても思い浮か ばないイメージの世界がある。

 フランスの食生活の文化的な意味合いについて、すでにエッセイを近代文奉社に 出していただきましたが、住まいをテーマにする本書もおおむね似ている書き方で まとめています。どうか味わってください。

 なお、ワープロ作成に惜しみなく協力してくださった目黒淳子にこのページを借 りてお礼を申し上げます。

<ヨハネ・ベル>


目次

まえがき

緑のじゅうたん

わきの下に抱えて家をはこぶ

魔法のじゅうたん

ヨコかタテか

アラジンよりも強し

暖炉

火に見とれて

大きくて真っ暗な穴

夕食後の団欒

忘却のさまざまな方法

くそ恐怖症

椅子の棒の生活

糸杉の家

一生の三分の一を過ごすところ

蛮族の血統

生まれてから死ぬまで

陛下のご起床の式

暑さと影

エジプトの神殿

電気がなかった時代

石造りの家

コンクリートに歌は聞こえるのか

世界の城壁の番付

家の目

がっしりした物が好き

気前のよさ

プライバシーの壁

家かストリートかどっちが先?

いなかの道

ハーレム

カタコンブ

人々の家、神の家なり

天井のすみの蜘蛛

本棚

朝寝坊時代

青き部屋

動くものと動かないもの

引越し

お入り下さい

階段

天国と地獄の間

天まで届く塔

石と風

なぜあなたは私と違うのか